エンジンコンピューター(ECM)修理

2016年7月

ある日突然、エンジンが異常振動するようになりました。
前に一度同じことがあり、その時はイグニッションコイルを交換して治りました。
ところが、イグニッションコイルを調べても異常がありません。
これは、いよいよエンジンコンピューターが逝ってしまった様です。
買ったら高いし、修理に挑戦することにしました。

まず、エンジンコンピューターを取り出します。

バッテリーをおろし、後ろの樹脂製カバーを外します。

現れたABSコンピューターのでかいコネクタを外します。
コネクタの下の金属のバネを押し下げると、左側が
持ち上がり、外れます。

10mmのナットを2つ外し、ABSコンピューターを外します。

ABSコンピューターを固定していた台座金具をビス2本外し
取り外します。

エンジンコンピューターの2つの大きなコネクタを外します。
コネクタの上の金具を起こすと外れます。

写真がぼけてしまいました。10mmのボルトを2本外すと、
エンジンコンピューターを取り出すことが出来ます。

外したエンジンコンピューター。

家に持ち帰り、蓋を開けます。
T10のトルクスボルトで固定されています。
とても固く締まっていて、トルクスビットに小さなモンキー
レンチをかけて緩めました。

故障箇所は、ネットで調べて大体見当をつけています。
多分、イグナイター基板のどこかか、終段のトランジスタ
が飛んでいると思われます。

終段トランジスタを放熱板(金属ケース)に押し付けている
金具を外します。端のツメを小さなマイナスドライバーで
起こして外し、きつくはまっている金属を大きなプラス
ドライバーで少しずつこじって抜き取ります。


裏蓋も同様に外します。


イグナイター基板を取り外します。
22個のハンダ付けを、熱しながらバキュームで取り去り、
出来る限り、端子をフリーにします。
アース線のハンダを取り除くのはちょっと難しかったので
すが、数個でしたので、これは溶かしながらイグナイター
基板を抜くことにしました。


無事外れました。


同様に、終段トランジスタを3つとも外します。

M104エンジンには、イグニッションコイルが3つしか
ありません。6気筒なのに3つしかないのは、2気筒を同時
に点火しているためです。
6気筒エンジンは設計上、2つのシリンダが常に同じ位置に
いて、片方が上死点で点火するとき、もう片方は燃焼済ガス
の排気を行って、吸気を始める状態にあります。
そのときに点火しても何も問題ない(何も起こらない)ので、
2つのシリンダを同時に点火するようにして、点火機構を
簡略化しているのです。

まずは終段トランジスタのチェックです。

半導体チェッカーでチェックします。
ネットで仕入れたBUX127チップのデータシート
通り、ちゃんとダーリントン素子として認識
されました。

特性もチェックします。

結果、3つとも異常はないようです。

すると、いよいよイグナイター基板が壊れているようです。

まず、ネットでイグナイター基板の回路図を見つけて
来ました。
なんとロシアの掲示板に貼られていました。
ロシアの人は、部品が入手しにくいのか、ちゃんと修理
するのですね。


ファンクションジェネレータで擬似信号を回路に投入して、
各ポイントの波形をオシロスコープでチェックします。

回路は、イグニッションコイルに電気を流す部分と、それを
検知してコンピューターにフィードバックする部分に分かれて
います。
点火異常をここで検知して、ミスファイヤーをカウントしたり、
触媒マフラーを守るために燃料カットとかするのでしょうね。


異常検知の部分は問題ありませんでした。
3つの点火系のうち、一つの回路のある部分の抵抗が焼き
切れている様です。

この基板は、薄いセラミックで作られていて、抵抗器は
パターンに印刷されている様で、付け替えることが出来
ません。
仕方がないので、ICの上から立体配線です・・・(^^;。


終段トランジスタも元に戻しました。


イグナイター基板も戻しました。


放熱板に終段トランジスタを押し付ける金具も戻し・・・


完成です!
雨が入らないように、ケースをしっかりと閉めて・・・


上部コネクタの、イグニッションコイルに行く部分の抵抗値
を測ります。
3回路ともこれぐらいの数値だったらOKです。

サクッと車に取り付け、恐る恐るエンジン始動!
異常振動はなくなり、完璧です。

なんと、エンジンコンピューターが部品代10円もかからなくて治りました。
ただし、壊れた箇所によって対処は異なりますし、技術的にもちょっと高度かもしれませんので、
万人にお勧めできる修理ではありません。

でも、だんだん部品が手に入らなくなりますし、中古ではすでに壊れているかもしれません。
ロシアの方々のように、交換でなく、頑張って修理しながら乗らなければならなくなって来ますよね。

もし、参考にされて挑戦されるかたはご自身の責任でお願いしますね。